PENTAX MX
今日はペンタックスMXのフィルムカメラ修理をご紹介します。
塗装のはげ具合からも分かるように、かなり使い込まれたMXです。
トップカバーを外した状態
巻き戻しクランク下に通常はモルトが貼ってありますが、すでに劣化したモルトは除去しています。主な修理内容
・シャッター不良
・フィルムカウンター不動
・シャッタースピード確認、調整
・シャッター表示板ズレ
・露出計確認、調整
・露出計スイッチ交換
・ファインダー分解清掃
・底蓋の凹み修復
・電池蓋の固着
・劣化モルト交換
・各部必要箇所への注油
・フィルム室内の清掃
・外観清掃修理内容
不具合状況
お客様からのご相談内容では、ずっと放置していたカメラで、最近使い始め、何回かは問題無く撮れていたそうですが、写真の右側が暗くなっているものや、写真全体が灰色(モノクロフィルム)になっているものが数枚あったということです。また、フィルムカウンターが回っていないとのことです。
修理について
シャッター不良
シャッター速度を測定器で測定したところ、エラーが表示されました。
目視でも、シャッター幕の動きが悪く、幕は開ききっていない状態です。
おそらく、この状態でシャッターを切ると、シャッター幕がフィルムにかぶったように、少し暗く写ると思われます。シャッターについては、幕軸とスローガバナーへ清掃と注油を行い、シャッター幕の動きを良くして、シャッター幕は開くようになりました。測定器でも測りましたが、シャッターエラーは解消されました。
シャッター速度が速かったため、測定器を使い、シャッター速度が許容範囲内に収まるよう調整を行いました。
フィルムカウンターの不良
フィルムカウンターが回らないとのことでしたが、正確には、カウンターが戻らず、そのため、カウントされない状況でした。
フィルムカウンターが戻らない原因は、油分などの汚れによる固着や、バネ外れなどが多いのですが、今回は、トップカバーと巻き上げレバーの間にあるリングが逆さに組まれていたため、フィルムカウンター部分を圧迫して、戻らない状態になっていました。
リングの上下を正しい位置に直して、組み上げると、問題なくフィルムカウンターは動作するようになりました。
リング
露出計のズレについて
露出計のズレについては、測定器を使い調整を行いました。
絞りの情報を露出計に伝える摺動抵抗(しゅうどうていこう)とブラシ部分については清掃を行いました。
摺動抵抗
露出計スイッチ
露出計のスイッチは巻き上げレバーにてON/OFFを行いますが、このスイッチにはクリック感があります。
こちらのカメラは、スイッチのクリック感が弱かったため、部品交換を行いました。交換前の部品
赤丸部分がすり減ってクリック感が弱くなっています。電池蓋の固着について
電池蓋については、腐食と固着がひどく、通常の開閉方法では開けることができませんでした。
そのため、蓋に穴あけ加工をして、蓋を開けました。電池蓋は交換を行っています。電池は長期保管する場合は、液漏れなどの心配があるので、必ず抜いておいた方が良いと思います。
底蓋の凹みについて
底蓋に凹みがあり、カメラ内部のレバーへ干渉していますので、板金を行いました。
底蓋(板金加工後)
板金は干渉している箇所を叩き出すだけなので、やや凹凸が残ります。
写真左上を叩き出しています。シャッター表示板
ファインダーを覗いた際、シャッター速度の表示板がわずかにズレています。
シャッター表示板を取り出して調整を行います。モルト交換
モルトは、ミラーボックス内に3か所、フィルム室に3か所、ヒンジ部分に2か所、前板のボディとの接触部分まわりに1か所、ボディ内部に5箇所、トップカバーに3か所貼りました。
カメラは定期的なモルト交換を行っておらず、年月もかなり経過しているため、モルトはかなり劣化していました。
トップカバー裏のモルト(モルト交換後)