PENTAX ME SUPER
今日は、ペンタックスME SUPERのフィルムカメラ修理をご紹介します。
ME SUPERは当店には修理依頼がよくある機種のひとつで、発売からすでに40年が経過したフィルムカメラですが、いまでも人気が高いカメラです。
よくある不具合としては、ミラーボックス内にあるゴムが経年劣化で粘り、シャッターを切るとミラーの動作が遅延したり、ミラーアップしてしまうというものです。
また、シャッターも適正な速度が出ないものが多く見受けられます。
こちらは、シャッターユニットを分解して、シャッター羽根をすべて洗浄しないと、シャッター速度が出ないことがあります。修理について
こちらのカメラは以前修理を行なった形跡がありました。
修理はプロが行った様子ではなく、おそらくは、アマチュアの方が行ったようです。カメラを分解してみると、電子基板の配線ミスや配線が切られていたり、パーツに歪みが生じていたり、修理内容に不完全な部分が見受けられます。
アマチュアの方が修理されたカメラを再修理するのは、通常の修理よりも時間がかかる場合があります。
例えば、アマチュアの方が修理される場合、試行錯誤しながら修理を行なうことがあるため、本来問題が生じない箇所にも不具合が生じ、その調査と修理に時間がかかるためです。結果、修理できない場合や、修理できても修理工数が掛かる場合があります。
もし、故障した時は、無理にご自身で直さず、プロに依頼されることをお勧めします。#今回のご依頼者は入手の経緯をお話されていたので、ご自身で修理されたわけではありません。
修理内容
さて、こちらのME SUPERですが、気になる不具合として、下記3つがありました。
・巻き戻しボタンロック不良
・ストロボ点灯不良
・シャッタースピードが全体的に速い早速、修理を行なっていきます。
修理はまず、巻き戻しボタンのロック不良から行っていきます。巻き戻しボタンロック不良
巻き戻しボタンはカメラ底面にある黒いボタンを押し込むことで、ボタンがロックされ、フィルムを巻き戻せる状態になります。今回は、このボタンのロックが掛からないという不具合です。
巻き戻しボタンが付いている状態
巻き戻しボタンが付いていない状態
上の写真にある赤枠の部分の金属板が巻き戻しボタンを押さえていますが、この部分が歪んでおり、ボタンがロックできない状態にありました。
通常、この金属板が歪むことは考えにくいので、おそらくは、以前修理し、再組立ての際、ボタンを組み込む手順がわからず、無理にボタンを押し込んだため、、金属板が歪んだものと思われます。
金属板はわずかな歪みでしたので修復し、巻き戻しボタンは正常に機能するようになりました。
次にストロボ点灯不良について修理を行なっていきます。
ストロボ点灯不良
ストロボが点灯しない原因を探っていったところ、こちらは配線のミスを見つけました。
こちらも、以前修理した方が間違えて、結線したものと思われます。配線を正常な箇所に付け直したところ、問題なく点灯するようになりました。
配線ミス
グレーの配線とピンクの配線が逆に付けられています。次はシャッタースピードが全体的に速い点について、修理を行なっていきます。
シャッタースピードが全体的に速い
シャッターユニットの分解を行い、シャッター羽根をすべて外して羽根の洗浄、再組立てを行います。
シャッターユニットを外した状態
シャッター羽根をばらした状態
分解清掃後、シャッタースピードは、ほぼ適正範囲内に戻りました。
次は、ミラーボックス内のゴムの状態を見ておきます。
ミラーボックス内のゴム
ゴムは本来、下記写真の赤丸部分(3か所)にあります。
ミラーボックス側面
上の写真は修理前の写真ですが、以前修理された方は、ミラーボックスの劣化したゴムを除去していました。
しかし、ゴムを除去しやすいところまで、分解しなかったためなのか、ゴムの取り残しがあり、ゴムのカスが残っていました。ゴムのカスが残っていると、そのカスがカメラ内を移動して、場合によってはフィルムに付着し、写真に写ってしまう場合が考えられます。
さらに、交換するゴムが入手できなかったようで、ゴムの取り付け3か所の内、2か所はゴムが入っておらず、残り1か所はゴムの代わりに、ビニールのリング?のようなものが付けられていました。しかし、このビニールリングはしっかり固定できておらず、ゆるゆるの状態になっていました。
これら、3か所については、ゴムのカスを清掃し、新しいゴムに付け替えました。
ME SUPERのミラーボックスの下部には、シャッター切った際、ミラーの衝撃を和らげるエアーダンパーが装備されています。
この部分にもゴムが使われています。
ここの箇所について、以前修理された方はゴムを交換していましたが、やはり、交換に適したゴムが入手できなかったようで、間に合わせのゴムで修理を行なっていました。しかし、このゴムは、エアーダンパー内でしっかり固定できておらず、ゆるゆるの状態でした。
この様な状態だと、何かのタイミングでゴム外れ、エアーダンパー内で引っ掛かり、ミラー動作に不具合を生じさせる可能性があるため、適切なゴムに交換を行いました。エアーダンパー
取り付けられていたゴム上記修理のほかにお客様のご要望として、「レリーズのストロークが浅い」ことと、「セルフタイマーの戻りが少し遅い」ので調整して欲しいとのことでしたので、調整を行っています。