OLYMPUS PEN-F
オリンパスPEN-Fのカメラの修理を少し詳しく紹介します。
オリンパスPEN-FはPENシリーズやOM-1と同様、オリンパスの天才的技術者であった、故人・米谷 美久(まいたに よしひさ)さんが開発に携わったカメラです。昭和38年(1963年)に登場した、世界初、そして世界唯一のハーフサイズ・システムの一眼レフカメラで、シャッター幕には当時、珍しかったチタンを採用し、そのシャッター幕を円盤状に加工し、回るシャッター(ロータリーシャッター)を開発しました。
PEN-Fは独創的な機能を満載した革新的なとても良いカメラですが、すでに発売から55年の年月が経過しているため、経年劣化により、現存するカメラはメンテナンスや修理が必要になるものが多いと思われます。
こちらのPEN-Fは今回、修理紹介するにあたり当店で用意したカメラですが、おそらく分解品と思われます。通常であれば、分解品の修理は行っていませんが、今回は修理紹介ということで、修理を行なっていきます。
まず、カメラの外観ですが、巻き戻しレバー側の角に打痕があります。動作は巻き上げが出来て、シャッターは切れますが、以下のような多くの不具合があります。
打痕不具合箇所と考えられる原因
・巻き上げレバーがスカスカの状態で巻き上げても自動でレバーが戻らない
⇒ バネが外れている・シャッターチャージは通常巻き上げ2回のところ3回(実際は2回とちょっと)巻き上げないとチャージできない
⇒ シャッターユニットの再組み込みの手順が間違っている・アイピース枠がしっかり固定されておらずカタカタと動く
⇒ アイピース枠が内部で破損して割れている・レンズを付けてシャッターを切ると時々ミラーアップしてしまう
⇒ ミラーボックスを組み込んだ後のテンション調整が悪い・スローシャッターの速度が速い
⇒ スローガバナーが油やホコリなどで固着している・ストロボをシンクロターミナルに付けると、巻き上げした際に点灯し、さらに、シャッターチャージ状態のままだと、ストロボが勝手に繰り返し点灯してしまう
⇒ シャッターユニットへの半田付けがおかしいか、リード線が一部ショートしている・ファインダー内がカビだらけ
⇒ 保管状態の問題と思われる・フィルムカウンターの戻りが悪く、戻っても「S」のポジションがズレている
⇒ 油やホコリなどで固着しているか、組み立てが間違っている・裏蓋のロックが軽い
⇒ トップカバー内部のスプリングがおかしい・モルトの劣化
⇒ 経年劣化上記の通り、かなり多くの不具合があるカメラですが、こちらを修理していきます。
では、順を追って修理を進めていきます。
トップカバーを外す
トップカバーを外すには下記の3つの箇所を外します。
・巻き戻しクランク
割り箸を写真のように入れて、巻き上げクランクを反時計回りで回すと外れます。
巻き上げクランクが外れた状態
パーツは巻き上げクランクとワッシャーです。・巻き戻しクランク下のネジ2本
写真にあるネジを外します。もう一本は巻き戻しクランクを回して反対側にもう1本ありますので、これも外します。
このネジは皿ネジです。・巻き上げ側の吊環横にあるネジ1本
このネジは丸皿です。巻き上げクランクとネジ3本を外したら、トップカバーを上に持ち上げると外れます。
注意点として、カバー内部にあるバネとレリーズボタン、それと、ストロボのシンクロケーブルに注意が必要です。トップカバーを外した状態
トップカバーについているストロボシンクロのリード線を外します。ドライバを使って外します。
レリーズボタンを取り外します。
アイピース枠の不具合
トップカバーを外すと、破損したアイピース枠が落ちてきました。
PEN-Fのアイピース枠は割れていることが多いです。割れているかどうかは、外観だけでは判断できないこともあります。今回のカメラはアイピース枠がしっかり固定されておらずカタカタと動いていたので、破損していることは予想できました。
アイピース枠は接着剤で補修して再利用します。アイピース枠のネジは左右で異なります。
取り付けた際に上に来る方が大きいネジで、下が小さいネジです。裏蓋のロックの不具合
こちらもトップカバーを外したところ、裏蓋を押さえるバネが欠品していました。バネが無いということは、分解品であることはほぼ間違いないと思われます。欠品しているバネは別途、部品を調達しました。
バネを用意
バネの取り付け位置巻き上げレバーの不具合
巻き上げレバーがスカスカの状態で巻き上げても自動でレバーが戻らない原因はバネのかけ間違いでした。
写真の赤丸で示した部分
間違い
正解写真に写っている、その下の巻き上げのギアをロックするパーツもバネが外れているようなので、ミラーボックスを外した後にかけ直します。