OLYMPUS PEN-EE

今日はオリンパスPEN-EEのフィルムカメラ修理をご紹介します。

オリンパスペンEEは、1961年(昭和36年)、今から58年前に発売されたカメラです。

発売当時のスペックは、レンズがD.ZUIKO 2.8cm F3.5、ピントは固定焦点、シャッタースピードも1/60秒の固定で、露出は絞りを自動調整する仕組みでした。

機能的にはかなり、割り切りが良いカメラで、「ボタンを押すだけで、誰でも簡単に美しい写真が撮れるカメラ」でした。

価格は10,000円くらいだったので、当時の大卒初任給の一ヶ月分くらいの価格設定だったようです。

PEN-EEはマイナーチェンジが行われています。
1961年の発売時は、シャッタースピード1/60秒固定でしたが、翌年(1962年5月)から、シャッター速度が2段階になり、1/30と1/250秒の2速の自動調整となりました。また、1966年からは巻き取り軸のスリットが増えています(EL:Easy Loading)。

スリットの違い

今回お預かりしたPEN-EEは巻き取り軸のスリットが増えているタイプですので、1966年(昭和41年)以降に発売された後期型のPEN-EEとなります。

修理内容

こちらのPEN-EEは下記のような不具合があります。

・シャッターが切れない
・低照度、高照度時の「赤ベロ」が出てこない
・明暗によって絞りが変化しない
・レンズ全体が「グラグラ」している
・レンズ内にカビ

などです。

まずは、トップカバーを取り外し、露出計の針の状態を確認してみます。

PEN-EEの露出計はセレン光電池が光によって起電して露出計の針を動作させ、シャッター速度や絞り値を決めています。

その仕組みは、針が明暗によって、左右に振れ、その針の位置を金属板で押さえて、シャッター速度と絞り値を決定します。

露出計の針と金属板(修理後)

光が暗過ぎたり、明る過ぎたりすると、針は金属板の押さえ位置から外れ、シャッターボタンが押せず、ファインダー内にその警告のための赤いプラスチックスの板(通称:赤ベロ)が出てきます。

赤ベロが出た状態(修理後)

まず、針の状態を見てみます。
本来であれば、針は、固定されていないため、カメラを左右に軽く揺らすと、針も一緒に軽く左右に動きます。
しかし、このカメラは左右に軽く揺らしても、針は微動すらせず、固定されたままです。

試しに、ピンセットで、そっと針に触れてみましたが、ピクリとも動かず、針は固定したままです。

なぜ、針が固定しているか、その原因を調査するため、今度はレンズシャッターユニットを取り外していきます。また、このPEN-EEはレンズ全体がグラグラしているので、その原因も合わせて調査していきます。

レンズシャッターユニットを外すには、フィルム室側の4本のネジを外します。
この時点で、ネジが緩んでいたりすると、レンズシャッターユニットがグラつきますが、こちらのカメラのネジは緩んでいませんでした。

レンズシャッターユニットを取り外し、露出計の内部を覗くとすぐに不具合の原因が分かりました。

原因は、なんと、露出計の内部にネジが挟まっていました。

この挟まったネジが針の動きを止めていたため、針が固定した状態になっていました。

挟まっていたネジはレンズを固定しているネジでした。

通常であれば、このネジは緩み止め剤が塗布されているので、緩むものではありませんが、残りのネジ2本も「ゆるゆるの状態」でした。ここから外れたネジが、露出計の内部に挟まってしまったようです。

通常、ネジの緩み止めの処理が行われている場合、ネジが緩むことは考えにくく、また同じ箇所の3本ともが緩んでいたことを考えると、ネジは以前に外され、その後、ネジの締め忘れと、緩み止め処理の忘れがあったと思われます。

今回は、しっかりとネジを締めて、緩み止めの処理も行いました。ネジを締めたので、レンズの「グラグラ」も解消されました。

露出計の内部に入り込んだネジを取り出したところ、露出計の針は正常に動作するようになりました。

しかし、低照度や高照度でも、まだ、赤ベロは出ておらず、また、シャッターも切れません。

赤ベロが出ないのは、内部の可動部分の粘りなどが原因のようで、清掃を行うことで、赤ベロは出るようになりました。

シャッターについては、シャッター羽根の粘りによるものなので、シャッター羽根の清掃を行うことで、高速側、低速側共に正常にシャッターが切れるようになりました。

レンズについては、分解を行い、カビ取り清掃を行い、クリアになりました。

モルトも貼り替えしました。
写真にある箇所と、フィルム室のモルトは上下にモルトが貼られていますので、両方交換しました。
また、ファインダー部分にもモルトがあるので、そちらも交換しました。

裏蓋のモルト

今回の修理は意外な所が不具合の原因でしたが、カメラは問題なく動作するようになりました。

オリンパスOM-1のカメラ修理のお問い合わせはこちら

オリンパスのカメラ修理一覧はこちら

これまでのカメラ修理ブログはこちら