OLYMPUS OM-1

オリンパス OM-1のカメラ修理を何回かに分けて紹介していきます。

OM-1はオリンパスの天才的技術者であった、故人・米谷 美久(まいたに よしひさ)さんが開発に携わったエポックメイキングなカメラです。小型で軽くて静かな一眼レフはこのOM-1から始まったのではないでしょうか。

OM-1はとても良いカメラですが、経年劣化により、メンテナンスや修理が必要になります。

OM-1の主な不具合例

OM-1での主な不具合としては以下のような症状があります。

巻き上げのロック

ロックは底面のギアの噛み合わせがおかしくなって起きることが多いです。

プリズムの腐食

腐食の原因はプリズムを覆うモルトプレーンが経年劣化で加水分解し、プリズムを腐食させます。

露出計の不調

不調の原因のひとつに、カメラに電池を入れたまま長期保管し、その電池が液漏れを起こして電池室の接点が腐食し通電しなくなることがあります。さらに液漏れが進むと、電池室からつながるリード線の中まで腐食が進む場合もあります。

不具合状況

今回のOM-1の主な不具合は以下の通りです。

・巻き上げレバーが空転状態(スカスカ・ブラブラ)で巻き上げ不可
・シャッターが切れない
・プリズムの腐食
・露出計は動作しているが、適正な値ではない

では、順を追って、修理を行っていきます。

巻き上げの不具合

OM-1でよくある故障としては、巻き上げレバーがロックしてしまうということを先に記載しましたが、こちらのカメラは巻き上げレバーがロック状態ではなく、完全にあたりがありません。レバーの状態を表現すると、空回り(スカスカ・ブラブラ)の状態で、もちろん巻き上げが出来ず、シャッターも切れません。

まずは状態を確認するため、底蓋を開けてみます。

赤丸箇所のネジ4本を取ると底蓋が取り外せます。

巻き上げロックは下記写真にあるギアの位置がズレて巻き上げがロックしてしまいますが、このカメラの場合、ギアの位置は問題ないようです。

3つのギヤのアップ写真

※参考写真
以前、OM-1の巻き上げロックしたギヤ状態のカメラと正常なギヤ状態のカメラを写真に撮っていたので、参考までにアップします。上が正常な状態で、下がロックした状態です。

ギアの状態は問題ないようですので、底面の反対側を確認してみます。
下記写真の通り、状態を確認すると、巻き上げは行われており、シャッターチャージしている状態です。

シャッターチャージ状態

念のため、一度、底面から強制的にレリーズできるか確認してみます。
ドライバーで指しているレバー部分を押し下げると、ミラーは動かず、シャッター幕だけが動作します。強制的にレリーズすると、シャッター幕は動きました。

強制レリーズ後、巻き上げレバーの空回り(スカスカ・ブラブラ)状態はなくなりました。巻き上げを行ってみると巻き上げも通常通り行え、シャッターも切れるようになりました。

シャッター速度の不具合

シャッターが切れるようになったので、シャッター速度を測定器で計測してみると、かなり速度が遅いようです。

1/1000秒を測定器で計測
シャッターは「1/1000」ではなく「1/250」の許容範囲くらいで切れています。

シャッター速度が遅い要因としては、油切れも考えられますが、こんなに速度が遅い場合、他の要因も考えらそうです。もっと他の視点から見てみます。

OM-1はシャッター速度を変える際に噛みあうギアが、ミラー下にありますので、まずはその箇所を探っていきます。
この箇所はミラーボックス内にあるスローガバナーと関係がありますので、スローガバナーがある所を見てみます。

下記写真にあるミラーボックス内の化粧板を剥がします。

化粧板を剥がした状態

すぐに、気づいたのは、上記写真の歯車に赤丸で印をつけた穴の位置です。本来この穴の位置は1/1000秒時にマウント正面にくるはずですが、その位置がズレています。通常は、シャッター速度切り替えのギアと噛みあっているので、こんなにズレるはずは無いと思います。おそらく、以前、修理のために分解して、ミラーボックスを組み込む際に間違って組み込んだものと思われます。

この状態を直すには、一度、ミラーボックスを取り外して、ギアの位置を正しい位置に戻してから再度、ミラーボックスを組み込む必要があるので、今回は此処までをご紹介し、次回以降、この箇所の修理を行います。

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※参考
米谷美久が語る開発秘話 OM-1~XAシリーズ

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