修理内容
お預かり時、カメラはミラーアップ状態で、巻き上げはロックしており、セルフタイマーもシャッターボタンを押しても、動作しない状態でした。
原因としては、長期間利用しなかった影響で、カメラ内部のグリスが固着してしまい、動作に支障を来していると思われました。
露出計については、ミラーアップを一時的に解除し、測定器を使って、露出計の精度を見ました。
測定結果は、高照度時(野外晴れ)には、1段程度のオーバー露出、中照度時(野外曇り)は、半段程度のオーバー露出、低照度時(明るい屋内)では、ほぼ適正露出を示しています。
露出計の正常動作としては、照度の違いに影響せず、適正露出を示すはずですが、こちらは、照度の違いにより、露出計の指針が指し示す値が異なっています。
露出計が示す通り実写をされる場合、野外での撮影では、晴れの場合、露出計が示す値よりも、1段程度絞り、曇りの場合は、半段程度絞ることで、適正露出に近づきます。
ただし、仮に、露出計が示す値のまま撮影した場合でも、ネガフィルムの場合、このくらいの露出にズレは、プリント時補正されるので、露出の違いは、あまり気にならないかもしれません。
レンズは、前玉に汚れやキズが多く見られます。
中玉にゴミの混入が見られます。
レンズのキズについては、清掃では除去できません。

ミラーアップと巻き上げ不良
ミラーボックスのレバーにかなり粘りが見られ、シャッターを切った際、リターンミラーの動作に遅延が生じていました。
その結果、一連のシャッター動作が正常に完了せず、ミラーアップを起こしたり、巻き上げ不良を生じる状態となっていました。
こちらは、当初、シャッターに関連するリンケージ部分の噛み合わせ不良が原因と思い、巻き上げ不良やミラーアップの原因となる噛み合わせ不良の修理を行いました。
修理後、レンズを装着してシャッターを切ると、問題なくシャッターは切れ、シャッター速度にも問題はありませんでしたが、レンズを外した状態で、シャッターを切ると、カメラの角度によって、ミラーアップの症状が出ることが分かりました。
そのため、この不具合については、ミラーボックスとシャッターユニットを取り出し、レバーやゴミなどを清掃した後、必要な箇所へ注油を行うことで、レンズを外した状態でも、問題無く、シャッターが切れるようになりました。
露出計
露出計については、カメラを分解してみると、配線内部が腐食していました。
配線内部が腐食すると、電圧が不安定になり、結果露出計が不安定な動作になります。
配線については、腐食した配線を取り除き、新しい配線に引き直しを行っています。
また、露出計の精度にもやや問題があったため、固定抵抗の部品を交換して、精度調整を行いました。
修理内容まとめ
- 巻き上げロック修理
- セルフタイマー動作不良修理
- ミラーアップ修理
- ミラーボックス清掃、注油
- 巻き上げ不良修理
- 露出計精度調整
- 露出計部品交換(固定抵抗交換)
- 電気配線引き直し(配線腐食の為)
- シャッター精度点検
- 劣化モルト交換
- ファインダー分解清掃
- フィルム室清掃
- 外装清掃
- レンズ分解清掃

この修理レビューの目的は、修理をご依頼していただいたお客様に向けての修理内容のご紹介となっております。
こちらの修理ブログを見て、お問い合わせいただいたお客様の同一機種のカメラの修理をお約束するものではありませんので、あらかじめご了承ください。