ニコンF2は、1971年(昭和46年)に発売された、ニコンFの後継カメラです。
ニコンF2の開発時の番号は、[30F]で、[Aカメラ]とも呼称されていたようです。
ちなみにニコンFの開発時の番号は、[20F]、後継のニコンF3は、[40F]です。
完全な機械式シャッターのカメラで、機械式フィルムカメラとしての完成形とも言われています。
こちらのニコンF2は、オーバーホールでのご依頼です。
お客様が気になっている不具合は、アイレベルファインダーの腐食とファインダーのロック不良とのことです。
カメラをお預かりして、状態を確認したところ、事前にお伝えいただいた、アイレベルファインダーのプリズム腐食とファインダーのロック不良が確認できました。
それ以外にも、高速シャッター速度の狂いや、セルフタイマーの動作不良、電池室の通電不良、モルト劣化などの不具合が見られました。
主な修理箇所
- ファインダーロック不良修理
- シャッター速度調整
- 各部注油(巻き上げ、幕軸、スローガバナー等)
- セルフタイマー修理(部品交換対応)
- 劣化モルト交換
- 各部清掃(フィルム室、外観、カメラ内部、裏蓋メモフォルダ紙片除去)
- 各種ファインダー分解清掃(スクリーンの分解清掃含む)
- 露出計精度調整
- 電池室通電不良修理
- アイレベルファインダープリズム再蒸着処理(腐食の為)
ファインダーロック不良修理
ニコンF2は、撮影用途に応じて用意された交換式ファインダーをユーザー自身で交換出来るカメラです。
この交換式ファインダーを固定するため、ファインダー側には、マウント側に1点、接眼側に2点の金属の突起があり、この突起をボディ側の金具の爪で捕まえて固定する仕組みになっています。
ファインダーの着脱は、アイレベルファインダーの場合、ボディ側のファインダー着脱ボタンを押しながら、ファインダーを持ちあげることで、着脱する操作となります。
通常は、一般的な撮影や持ち運び時の振動などで、ファインダーが外れることはありません。
しかし、お預かりしたニコンF2は、シャッターを切った際のわずかなショックでも、時々ファインダーが外れる状態でした。
このファインダーロック不良の原因を調査したところ、カメラ本体側のファインダーをロックする金具の僅かな変形によりロックが甘くなっており、わずかな振動で、ファインダーが外れてしまう状態になっていました。
金具変形の原因はお客様からは伺っておらず、想像するに、おそらくは、ファインダー交換時のタイミングで、ファインダー側のロック金具とボディ側のロック金具がうまく嚙み合っていない状態のまま、力がかかってしまったため、金具が変形したものと思われます。
実際にカメラを分解して金具を取り出し、金具の変形状態を確認しました。
一見すると、金具の変形は見られない様子でしたが、よく観察すると、金具は僅かに変形しており、これが原因でファインダーがしっかりロックできていないものと思われます。
修理は、金具の僅かな歪みを修正しては仮組みして、ファインダーの着脱状態を確認するという工程を繰り返して、金具の歪みを修正しました。
修理後のファインダーロックの確認は、アイレベルファインダー以外に、こちらのお客様より修理でお預かりしていた、フォトミックとフォトミックAファインダーにおいても、着脱確認を行いましたが、すべてファインダーにおいて、問題なく着脱が行え、装着後に不用意にファインダーが外れることが無いことを確認しております。
シャッター速度調整
シャッター速度については、高速側の速度(1/1000秒や1/2000秒)が1段程度速かったため、シャッター幕軸やスローガバナーへ注油後、測定器を使って、調整を行っております。
シャッター速度調整後は、高速側のシャッター速度においても、許容範囲内の速度が出ています。
セルフタイマー
セルフタイマーは、正常に動いている様子ですが、シャッターチャージ(巻き上げ)を行っていない状態で、セルフタイマーのレバーを回し、セルフタイマーのスタートボタンを押すと、レバーが元の位置に戻ってきませんでした。
こちらは、セルフタイマー部品を取り出し、清掃、注油等を行った後、組み戻して、動作の確認を行いましたが、症状が改善することはありませんでした。
そのため、セルフタイマーの部品交換を行いました。
部品交換後は、シャッターチャージの有無に関係なく、セルフタイマーは正常に機能するようになりました。
モルト劣化
劣化が見られるモルトについては、除去、清掃を行い、新しいモルトに貼り替えを行っています。
シャッターの静音用モルトについても、ミラーボックスを取り出して、交換を行っていますので、修理前に見られた、シャッターを切った後の、長い残響音もかなり抑えられています。
電池室通電不良
通電不良が確認できましたので、原因を調査し、修理を行いました。
通電不良の原因は、電池室にある、電池と接触する金具を止めているネジ部分のプラスチック樹脂部品のひび割れによるものです。
電池室のこの箇所は、経年劣化で、ひび割れすることが多く、それが原因で、電圧が不安定になり、露出計の動作が不安定になったり、スイッチを入れても、通電されず、露出計が全く動作しなくなります。
修理は、電池室にあるプラスチック樹脂部品を補修することで、問題なく、通電するようになっています。
プリズム腐食
アイレベルファインダーにプリズム腐食が見られたため、プリズムの再蒸着処理を行っています。
型式 | 機械制御35㎜フォーカルプレーン一眼レフ |
ファインダー視野率 | 約100% |
シャッター | チタン幕横走行シャッター |
シャッタースピード | 1~1/2000秒・B・T |
レンズマウント | Nikon Fマウント |
大きさ | 幅152.5mm x 高さ110mm x 奥行65mm |
重量 | 720g |
発売年月 | 1971年(昭和46年)9月 |
発売価格 | 64,200円(ボディのみ) |
この修理レビューの目的は、修理をご依頼していただいたお客様に向けての修理内容のご紹介となっております。 こちらの修理ブログを見て、お問い合わせいただいたお客様の同一機種のカメラの修理をお約束するものではありませんので、あらかじめご了承ください。