修理内容
こちらのペンタックスMXは、ミラーアップしたままシャッター切れない状態です。また、モルトの劣化が著しいため、モルトの交換が必要です。
ミラーアップ
ミラーアップの原因は、主にシャッター幕軸やカメラ内部の可動部の油切れですが、修理を始めてみると、想定していたよりもカメラの状態は悪い状態でした。
修理は、かなり深部まで分解しましたが、修理後は、ミラーアップは解消し、シャッターは切れるようになりました。
シャッタースピード
ミラーアップ修理後、シャッターが切れるようになったため、測定器を使ってシャッタースピードを測ったところ、低速から高速に至る、全速度において許容範囲を超える値となっていました。
シャッタースピードの調整については、ご依頼を受けていませんが、狂いが大きく、撮影に大きな影響が考えられるため、シャッタースピードについては調整を行いました。
中速から高速の1/60秒~1/1000秒のシャッタースピードについては、調整後、先幕と後幕にやや幕速差が見られますが、許容範囲内の速度に収まりました。
低速域の1/30秒~1秒については、スローガバナー(低速のシャッタースピード作るギアの集合部品)が関係しますが、おおまかな速度として、低速域すべての速度で、1段程度速い速度で切れている(例えば1秒が1/2秒くらいで切れている)状態でした。
低速については、スローガバナーのテンション調整を行い、許容範囲内の速度に収まりました。
劣化モルト交換
ペンタックスMXはカメラ内外にモルトを多用しているカメラです。
このモルトは経年劣化により、ボロボロになっているため、交換が必要です。
主な修理箇所
- ミラーアップ修理
- モルト交換(ヒンジ部分、フィルム室、前板、リターンミラー緩衝用、ボディシャーシ)
- シャッター幕軸注油
- スローガバナー注油
- スローガバナーテンション調整修理
- シャッタースピード調整
- 露出計精度調整
- 貼り革貼り直し
- ファインダー分解清掃
- フィルム室清掃
- 外装清掃
仕様
型式 | TTLデジタル定点式露出計内蔵の35ミリ判フォーカルプレンシャッター式一眼レフ |
使用フィルム | 35ミリフィルム(J135パトローネ入り) |
画面サイズ | 24 x 36mm |
標準レンズ | SMCペンタックス・50ミリ・F1.2[6群7枚]、最短距離目盛・0.45m SMCペンタックスM・50ミリ・F1.4[6群7枚]、最短距離目盛・0.45m SMCペンタックスM・50ミリ・F1.7[5群6枚]、最短距離目盛・0.45m SMCペンタックスM・40ミリ・F2.8[4群5枚]、最短距離目盛・0.6m 自動絞り、直進ヘリコイド、最小絞り・F22 すべて距離目盛は、被写体からフィルム面まで |
レンズマウント | ペンタックスKマウント、Kマウントレンズ交換可能、フランジバック・45.5mm |
シャッター | 横走りゴム布幕メカニカルシャッター、シャッターボタンロック付き B、1、1/2、1/4、1/8、1/15、1/30、1/60、1/125、1/250、1/500、1/1000秒 |
シンクロ | ホットシュー[X接点]、FP、Xターミナル[JIS・B型、抜け止めねじ付き] Xシンクロは1/60秒 |
セルフタイマー | 4~12秒、始動はセルフタイマー作動ボタンによる |
ファインダー | ペンタプリズム式ファインダー[銀コート]、絞り表示窓、シャッター速度表示、フォーカシングスクリーンは交換可能 標準仕様はスプリットマクロマット式 像倍率・50ミリレンズで0.95x、視野率・95%、視度・[ピント面] -1ディオプトリー[D]、[シャッター速度目盛]・-1/55D ファインダー視野率の注意:サービスサイズ[カラー、黒白とも]の場合、MXのファインダーでは確かに入っていたものが、切れてしまうことがあります。特にMXの長辺の方は切れることが多いので、構図を決めるときに、多少余裕を残しておくと無難です。 |
ピント合わせ | ピントリングを回して、ピントグラス上の映像を接眼レンズで拡大して見る |
ミラー | クイックリターンミラー |
手動絞り | セルフタイマーレバーによる |
フィルム装填 | マジックニードル式クイックシュアローディング |
巻上げ | レバーによる。巻上げ角・162°、予備角・20°、多回巻き可能、巻上げ表示窓 |
自動巻き上げ | モータードライブ、ワインダーMX[別売り]を装着すれば可能 |
枚数盤 | 自動復元順算式[卷戻しノブを引き上げると、裏蓋が開き、枚数盤はゼロマイナス2になる] |
巻戻し | 巻戻しボタンを押し、巻戻しクランクによる。 巻戻しボタンに巻戻し完了表示付。 巻戻しボタンは次の巻き上げによって復元。 |
露出計 | 中央重点全面測光式 受光帯・GPD[ガリウム・ヒソ・リン・フォトダイオード] スリーカラーLED・[発光ダイオード]によるデジタル定点式手動調節・開放測光 緑灯・・・・・適正露出 黄灯・・・・・ややオーバー、またはやや不足 赤灯・・・・・オーバー、または不足 素行範囲は50ミリ・F1.4レンズの場合、ASA100・EV1~19、ASA目盛、25~1600 |
電源 | 1.5V銀電池、2個[マクセルG13など] |
露出計スイッチ | シャッターボタンの第一段でon 巻上げレバーの予備角位置で、シャッターボタンの第一段まで押すと、on持続 巻上げレバー収納、またはシャッターボタンロックでoff |
バッテリーチェッカー | なし 電池が消耗すると、露出計スイッチのonによって、LEDが点灯しなくなる |
裏ぶた | 巻戻しノブを引上げると開き、裏ぶたを押しつけるとしまる 交換式、ダイヤルデータ、長尺マガジンMXを装着可能 |
メモホルダー | 裏ぶたにある |
大きさ | 幅135.5ミリ x 高さ82.5ミリ x 厚み49.5ミリ [幅は上カバーの外寸、厚みはマウント面から裏ぶたまで。メモホルダーを除く] |
重量 | ボディのみ495g、50ミリ・F1.4付き・733g |
付属品 | 肩ひも、ショルダーパッド、三角金具、三脚用補助板、ボディーキャップはボディに付属[標準レンズ付きで出荷する場合はボディーキャプが付属しません] 標準レンズキャップ、レンズマウントキャップは標準レンズに付属[標準レンズ付きで出荷する場合は、レンズマウントキャップが付属しません] |
発売年月 | 1976年[昭和51年]11月 |
発売価格 | 48,000円[ブラックボディは3,000円高] |
この修理レビューの目的は、修理をご依頼していただいたお客様に向けての修理内容のご紹介となっております。
こちらの修理ブログを見て、お問い合わせいただいたお客様の同一機種のカメラの修理をお約束するものではありませんので、あらかじめご了承ください。