Nikkor-H AUTO 1:18 f=85mm

Nikkor-H AUTO 1:1.8 f=85mm レンズ清掃

仕様

レンズ構成4群6枚
最短距離1m
全長70mm
重量420g
発売年月1964年(昭和39年)8月
発売価格32,700円

修理内容

Nikkor-H AUTO 1:1.8 f=85mm レンズ清掃
分解清掃中

こちらのレンズはレンズ内部のカビと思われるくもりの除去等のオーバーホールで修理依頼がありありました。

後玉の曇りについて

レンズの曇りは、後玉のレンズに見られます。

後玉のレンズの曇りについてですが、こちらは、レンズのガラス硝材そのものが曇ってしまっており、レンズを取り出して清掃を行いましたが、曇りの除去はできませんでした。

後玉のレンズの状態については、レンズを取り出して確認していますが、レンズ単体の場合、レンズは抜けて見えており比較的クリアな状態で、曇りは目立ちませんが、レンズを組み上げると、薄曇りが見られます。

なお、この薄曇りは、強い光源下などの撮影でなければ、大きな影響は無いと思われます。

中玉のコバ落ちについて

Nikkor-H AUTO 1:1.8 f=85mm レンズ清掃
コバ落ち

コバとは、レンズの端部分を指しています。
眼鏡で言えば、レンズの端のすりガラスみたいに見える断面部分のことです。

カメラのレンズは、レンズに厚みが生じる場合、コバ部分に乱反射防止のため、黒い塗料が塗られています。

その塗装が経年劣化で剥がれてしまった状態をコバ落ち(コバはがれとも言います)と言っています。

こちらのレンズの中玉はコバ落ちが酷く、その状態が広範囲に広がっていました。
また、コバ落ちした塗装は黒い粉状になって、レンズに付着している状態でした。

コバ落ちした中玉については、取り出して、コバの周辺をきれいに拭き取った跡、コバの塗り直しを行い、その後、レンズ清掃を行っております。

中玉の気泡?

中玉の合わせレンズの中に、円形の気泡のようなものが見れますが、こちらは、製造時のもので、合わせレンズの内側にあるため、清掃では除去できませんでした。

なお、こちらは、写真に写るようなものでは無いと思われます。

前玉の気泡?

前玉部分にカビのようなものが見えますが、こちらは、レンズ製造時に入ったガラス硝材内の気泡のようなものと思われ、清掃では除去できませんでした。

なお、こちらは、写真に写るようなものでは無いと思われます。

ヘリコイド

Nikkor-H AUTO 1:1.8 f=85mm レンズ清掃
ヘリコイド分解

ヘリコイドとは、ピント合わのための、螺旋状のレンズの繰り出し機構部分を指しています。

ヘリコイドには、レンズの繰り出しを滑らかにするため、グリスが塗布されていますが、こちらのレンズは、製造からかなりの年数が経過しているため、そのグリスが変色し、ヘリコイドの繰り出しにも少しムラが生じている状態でした。

こちらのレンズのヘリコイド構成は、内ヘリコイド、中ヘリコイド、外ヘリコイドと3つに分れており、そのヘリコイド全てを取り出し、劣化したグリスの除去、清掃を行い、新しいヘリコイドグリスを塗布しています。

ヘリコイドグリスを入れ替えた後の、レンズ繰り出しはムラも無くなり、滑らかな操作になっております。

こちらのレンズは、中望遠で明るいレンズということもあり、ピント合わせはシビアになりがちです。
そのため、ヘリコイドの繰り出しはグリスを調整し、微妙なピント合わせに対応できるよう、やや重めにセッティングしてあります。

ヘリコイドを抜きましたので、組み戻し後、ピントにズレが生じていないか、無限遠の確認を行っております。

なお、写真には罫書した跡(傷のような縦線)が見られますが、こちらは、メーカー(当時の日本光学工業)が製造過程の組み立て時に無限遠調整のために付けた印となっており、この当時のレンズには、よく見られる印です。

なお、この印は、鏡胴で隠れてしまうため、分解しなければ目にすることは出来ません。

絞り指標墨入れ

絞り指標の塗装が剥げかけていましたので、塗料を調合して色を作り、墨入れを行っています。

主な修理内容は下記の通りです。

・レンズ分解清掃
・中玉レンズコバ塗り
・内、中、外ヘリコイド分解清掃
・内、中、外ヘリコイドグリス交換
・無限遠確認
・絞り指標墨入れ
・外装清掃
こちらの記事の目的は、修理をご依頼していただいたお客様に向けての修理内容のご紹介となっております。
こちらの記事を見て、お問い合わせいただいたお客様の同一機種のカメラ修理をお約束するものではありませんので、あらかじめご了承ください。