キヤノンAE-1は、1976年(昭和51年)4月に発売され、キヤノンのAEカメラの先駆けとなったモデルです。
一般的に「AEと」は、「Automatic Exposure Control」の略ですが、「AE-1」の「AE」は意味が異なり、「Total Automatic System By Electronic SLR Camera」の意味で、「1」は「No.1」、つまり「電子式一眼レフカメラの頂点」を指しているそうです。
こちらのキヤノンAE-1は、「フィルムの前半が撮れてなかった」、「撮れてるプリントも端が黒くなっている」という、幕被りの症状で、修理依頼がありました。
シャッター
1/500秒と1/1000秒で、シャッター幕の被りが確認できました。
測定器を使ってシャッター速度を測ると、シャッター速度はおおむね速く、シャッター速度の値も、都度かなりバラつき見られ、一定の速度が出ず、不安定な状態です。
シャッター幕の被り、シャッター幕軸の油切れが影響します。
また、シャッター鳴きの症状も出ており、シャッターを切った際に異音がします。
シャッター鳴きは、リターンミラーを可動させるギアの油切れにより、異音が発生し、症状が進行すると、ミラー動作が緩慢になり、最後はミラーアップしてしまう不具合です。
絞り連動不良
絞り連動不良は、レンズ側で設定した絞り値が、カメラに伝わらない不具合です。
初期症状では、絞り羽根の動作が緩慢になり、レンズをF16やF22に絞っても、設定した通りの絞り値まで絞り込めなくなります。症状が悪化してくるにしたがい、次第に異音がして、最終的には、レンズ側で絞り込んでも、開放値のまま、全く絞り込めなくなる不具合です。
こちらのAE-1は、カメラボディに伝える摺動抵抗を動かすギアが油切れを起こしていることが原因だったため、油切れを起こしているギアへ注油を行うことで絞り連動不良は直りました。
シャッターダンパー交換
AE-1には、シャッターを切った際、リターンミラーの振動やシャッター音を抑えるダンパーが備わっていますが、経年劣化でボロボロになっていたため、部品交換を行いました。
裏蓋
裏蓋については、少し変形が見られ、締り具合がよくありません。
写真を見ていただくと分かりますが、裏蓋はボディ側から少し浮いている様子が伺え、この浮いたすき間から光が入り込んでいる可能性も考えられます。
念のため、こちらの変形については、補修を行いました。
ファインダー清掃
ファインダーの汚れがひどいため、ファインダー部分を分解して清掃を行っています。
Canon AE-1のファインダーの光学部分は、接眼レンズ、プリズム、フレネルレンズ、フォーカシングスクリーン、リターンミラーの5つの部品で構成されています。
ファインダーを覗いた時に、混入したゴミが視界に入るのは、ピント面となるフォーカシングスクリーンですが、このフォーカシングスクリーンは、ユーザー自身で取り出すことが出来ない構造となっているため、スクリーンの裏側にゴミが混入してしまうと、このように分解しないと清掃が難しいです。
主な修理内容
- シャッター幕被り修理
- シャッター鳴き修理
- 絞り連動不良修理
- ソノレイド清掃
- シャッター幕軸注油
- シャッター速度調整
- シャッターダンパー交換
- 露出計精度調整
- 劣化モルト交換
- ファインダー清掃
- フィルム室清掃
- 外観清掃
- 塗装劣化補修(磨き修理)
- 裏ぶた変形補修
型式 | 電子制御式35mmフォーカルプレーンシャッター一眼レフAEカメラ |
画面サイズ | 24mm X 36mm |
使用レンズ | FDレンズ群(開放測光AE撮影) FLレンズ群(絞込み測光撮影) |
標準レンズ | キヤノンFD55mmF1.2 S.S.C. FD50mmF1.4 S.S.C. FD 50mmF1.8 S.C. |
レンズマウント | バヨネット式マウント,FD,FL,R各レンズ取りつけ可能 |
ファインダー | ペンタプリズム使用のアイレベル式 |
視野の大きさ | 上下93.5%、左右96% |
ファインダー内情報 | マイクロスプリット距離計,絞り目盛,メーター指針,露出オーバー警告マーク,露出アンダー兼連動範囲外警告ランプ,手動撮影表示Mランプ(LEDー赤色発光ダイオード使用),絞り込み測光件バッテリーチェック定点 |
ファインダーアタッチメント | アングルファインダー,マグニファイヤー,視度補正レンズ10種,アイカップ |
ミラー | ノンショッククイックリターン反射ミラー |
AE機構 | シャッタースピード優先式電子制御自動露出機構(AE),IC2コとI2L(アイ・スクエア・エル)を応用のLsI1コ使用 |
測光方式 | 受光素子にシリコンフォトセル(SPC)使用のTTL中央重点測光 |
測光範囲 | ASA100でEV1(F1.4・1秒)~18(F16・1/1000秒) |
使用フィルム感度 | ASA25~ASA3200 |
露出補正 | 露出補正スイッチによりオーバー側へ1.5絞り補正 |
露出読取り | シャッターボタンの第1ストロークまたは露出読取りスイッチにより確認 |
シャッター | 全速電子制御の4軸式布幕フォーカルプレーンシャッター,ショック吸収および消音装置付き |
シャッタースピード | 1/1000・1/500・1/250・1/125・1/60・1/30・1/15・1/8・1/4・1/2・1・2(秒)・B、X接点は1/60秒 |
シャッターダイヤル | ASA感度目盛りセット,B・1/1000~1秒は白色,2秒は橙色,不用意回転を防ぐシャッターダイアルガード付き |
シャッターボタン | 電磁レリーズスイッチ式大型ボタン,第1ストロークで測光回路のスイッチオン,第2ストロークでシャッターレリーズが行われる.ボタンロック機構あり,ケーブルレリーズソケット付 |
セルフタイマー | 電子制御セルフタイマー,シャッターボタン周りのセルフタイマーレバーを前方に出すことによりセット,指導はシャッターボタンによる.時限は10秒,作動中はランプによる点滅表示(LED) |
絞込み | プリセット絞りリングをセットしたときのみ絞込みレバーを押込み |
電源 | 6V酸化銀電池(JIS4 G13,エバレディNo.544,マロリーPX28)またはアルカリマンガン電池(エバレディNo.537,ナショナルマロリー7K34)通常の使用で約1年使用可能 |
電池チェッカー | チェックボタンを押してファインダー内指針の振れによって読取る |
シンクロフラシュ | X接点,1/60秒,M級は1/30秒以下使用 |
ソケット | アクセサリーシュー部には直結接点および信号接点あり,ボディ前面にJIS B型ソケットあり,感電防止機構付き |
フラッシュオート | 専用スピードライト155A仕様でシャッターおよび絞りが自動設定され自動調光となる |
裏蓋 | 着脱可能,データーバック交換可能 巻戻しクランク引上げにより開放,メモホルダー付 |
フィルム装てん | 多スリットスプールによる簡易装てん |
フィルム巻上げ | 一作動,巻上げ角120°,予備角30°,小刻み巻上げ可能,パワーワインダーAにより自動巻上げ可能 |
フィルムカウンター | 順算式,自動復元式,フィルム巻き戻し時は連動して逆転 |
フィルム巻戻し | 巻戻しボタンおよび上部クランクによる巻戻しボタンは巻上げにより自動復帰 |
その他 | 電池消耗時にはカメラが作動しない安全機構,シャッター作動中の巻上げ防止等 |
ファインダー | ペンタ固定アイレベル式 倍率0.83倍、視野率=上下93.4%、左右95.3% |
大きさ | 幅141mm x 高さ87mm x 奥行47.5mm |
重量 | 590g ボディのみ FD50mmF1.4S.S.C.付き895g |
発売年月 | 1976年(昭和51年)4月 |
発売時価格 | 81,000円(FD50mm F1.4SSC付き)、4,000円(ケース) |
この修理レビューの目的は、修理をご依頼していただいたお客様に向けての修理内容のご紹介となっております。 こちらの修理ブログを見て、お問い合わせいただいたお客様の同一機種のカメラの修理をお約束するものではありませんので、あらかじめご了承ください。