Canon A-1

今日はキヤノンA-1のフィルムカメラ修理をご紹介します。

キヤノンA-1は1978年(昭和53年)4月に発売されました。

キヤノンA-1の特長として5つの自動露出制御の方式があります。
もちろんマニュアル露出もできます。

・シャッタースビード優先AE
・絞り優先式AE
・完全自動プログラムAE
・絞り込み実絞りAE
・スピードライトAE

特にプログラムAEは絞りも、シャッター速度もカメラまかせで、当時は先進的な印象がありました。

また、ファインダー情報が赤いLEDで表示され、当時、露出計と言えば、アナログ指針が当たり前の時代、A-1を手に入れた友達にお願いしてファインダーを初めてのぞかせてもらった時、そのデジタルで表示される数字のカッコ良さにA-1が欲しくなったのを今でも覚えています。

修理内容

こちらのA-1の不具合は、「シャッター鳴き」と「シャッター速度と露出計のズレ」、「モルトの劣化」、「ファインダーの汚れ」などが見られます。

キヤノンAシリーズは「シャッター鳴き」以外にも、「絞り鳴き」や「巻き上げ鳴き」、「マグネットの固着」などの不具合もよく見られる症状です。

下記にそれぞれの不具合について見ていきます。

シャッター鳴き

シャッター鳴きはミラーを稼働させるギアの油切れが原因で、油が切れはじめてくると、そのギアから異音がしてきます。その後、時間とともに、ミラーの動き遅くなり、最後はミラーアップしてしまいます。

修理としては、ギア部分にほんの少量、注油を行うことで、シャッター鳴きは解消されます。

よくネットの情報で、ユーザーの方が、マウント側やボトム側から油を入れて、シャッター鳴きの修理を紹介している方がいらっしゃいます。

多くの場合、この方法が成功例として紹介されていますが、ギアが見えていない箇所に注油するため、注油箇所を間違うと、カメラが壊れる可能性があるので、お勧めはできません。特にA-1は電子シャッターのカメラなので、電子基板に油が飛び散った場合、基板がショートする可能性があるので注意が必要です。

シャッター鳴きの修理方法としては、やはり、ミラーボックスを外して、鳴いているギアの軸にほんの少量油を差す方法が確実です。

絞り鳴き

また、絞り鳴きという症状もあり、こちらは、レンズの絞り情報をカメラに伝えるレバー部分が油切れで鳴く症状です。

症状が悪化すると、レンズでは絞り込んでいても、絞りが動かない状態になります。

絞り鳴きもミラーボックス部分にあるので、絞り鳴きが無くても、シャッター鳴きと同時に注油を行います。

修理方法はシャッター鳴きと同じで、鳴いているギアにほんの少量油を差すことで、絞り鳴きは解消されます。ギアの近くには絞り情報を電気的に伝える基板があるので、この基板に油が飛び散らないように注意し、飛び散った場合は必ず清掃を行う必要があります。

巻き上げ鳴き

巻き上げ鳴きは巻き上げを行った際にする異音です。

これもシャッター鳴きや絞り鳴きと同様に油切れなので、巻き上げに関連する軸にほんの少量油を差すと改善します。

フィルムを入れると、多少、音が鳴り止む場合もありますが、根本的な解決には注油が必要です。

マグネットの固着

マグネットの固着ですが、A-1のシャッターは電子シャッターなので、、電子基板で制御されたシャッター秒時に応じて、マグネットを入り切りすることで、シャッターが切れる仕組みになっています。

不具合はこのマグネット部分に金属がくっついて離れない症状で、こうなってしまうと、シャッターが切れない状態になります。

こちらの修理はマグネット部分の清掃を行うことで、直ることがほとんどです。

ファインダーの汚れ

ファインダーの汚れは、ファインダーに関係する箇所を清掃をすることで取れることがほとんどです。

清掃箇所
ファインダーに関係するのは以下の箇所です。

・接眼レンズ
・プリズム
・フレネルレンズ
・フォーカシングスクリーン
・ミラー

こちらのA-1は写真にあるように、フレネルレンズに線状の跡がありましたが、フレネルレンズを清掃すると線状の跡は取り除けました。

フレネルレンズ

露出計の調整

A-1の露出計調整はトップカバー下にある、可変抵抗を使って調整を行います。
調整する際、トップカバーを付けますが、調整の度にトップカバーを着けたり外したりするのは面倒なため、ジャンク品のA-1からトップカバーだけ外して、可変抵抗が見えるようにトップカバーをくり抜くと、トップカバーを付け外しせずに簡単に調整が行えます。

露出計調整用カバー
露出計調整用にジャンク品のトップカバーを付けた状態

分解について

A-1の分解について少しだけ説明します。

トップカバーを外す

A-1のトップカバーを外します。

トップカバーを外す前に目安として、【ASA6400】、【B】に設定しておきます。
設定は特に問いませんが、外す時に設定を決めておくと組み立て時に楽です。

A-1のトップカバーを外す場合、AE-1などに比べて少しだけ外すパーツが多いのですが、トップカバーを外すこと自体は、そう難しいことではありません。

トップカバーを開けるために外すパーツ類は以下の通りです。

パーツ類
・巻き上げレバー
・シャッターボタン
・巻き戻しクランク
・ASAダイヤル
・ATダイヤルガード
・アイピースシャッターレバー
・エプロン
・トップカバーを留めているねじ
・フラッシュ接点の半田

巻き上げレバーとシャッターボタンを外した状態

巻き戻しクランクを外した状態

ASAダイヤルを外した状態

ATダイヤルガードを外した状態
ベアリングがあるので注意

アイピースシャッターレバー
化粧ゴムをはがしてその下のねじを外します。

フラッシュ接点の半田
エプロンとトップカバーを留めているねじを外せば、トップカバーが外れます。
フラッシュの接点が半田付けされているので、外します(黒いリード線)。
半田が付いている部分は製造年によって、写真と異なる場合があります。

トップカバーを外した状態

ミラーボックスを外す

ミラーボックスを外すには、ミラーボックスから電子基板につながっているリード線の半田を最初に取る必要があります。

電子基板は3層(3枚?)構造になっていますが、ミラーボックスを外すには、「LED表示部分の電子基板」と「ASAダイヤルにつながる電子基板」をあらかじめ外しておく必要があります。この電子基板を外さずに無理にミラーボックスを引き抜くと、電子基板が破断して、電子基板が利用できなくなるので注意が必要です。

ミラーボックスを外した状態

ミラーボックス部分

雑談

A-1はなぜ電池を消耗しやすいのか?
よくA-1は「電池が持たない」と言われていますが、これは採用した半導体に起因するものと思われます。

A-1が製造されていた当時、マイクロコンピュータ(マイコン)の半導体として採用されていたのはPMOSやNMOS型のものが利用さていたと思われます。

現代はCMOS(シーモス)型のものが利用されおり、PMOSやNMOSと比べて格段に消費電力が低く、動作も速いのが特長です。

A-1が製造されていた70年代はCMOSを作る技術がなかった(もしくはコスト的に無理だった)ため、PMOSやNMOS型の半導体を採用したと思われます。そのため、消費電力が高く、結果として「電池が持たない」ということになってしまったのだと思います。

「電池が持たない」と言われているA-1ですが、取扱説明書には「通常の撮影の場合で、約1年間使用できます。」と書かれています。

「通常の撮影」がどのような撮影環境で、どの程度の撮影頻度なのかは分かりかねますが、おそらくは、極端な温度差がなく、月にフィルム1、2本程度であれば、1年くらいは電池交換なしで利用できるということと思います。

A-1はキヤノンのAシリーズの中での最高級機種です。
当時は、完全なデジタル制御による最新式の電子カメラでその機能も豊富でした。

そんな最新式のカメラの宿命なのか、当時は「機械式シャッターじゃないとダメ」とか、「電池が持たない」とか、揶揄する人もいました。

しかし、40年以上経過した今でも人気がある機種であることから、やはりすばらしいカメラだったと言えるのではないでしょうか。

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