OLYMPUS TRIP 35
今日はオリンパス TRIP 35のカメラ修理をご紹介します。
オリンパスTRIP 35は昭和43年(1968年)、14,800円で発売され、発売後、20年間という長い年月、販売された、超ロングセラーのカメラです。
ベースとなったカメラは同社のペンEESで、フィルムサイズはPENのようにハーフではなくフルサイズのコンパクトEEカメラです。
TRIPという名前の由来は、オリンパスによると、小旅行に気軽に持って行けるカメラということで、「トリップ」と名付けられたとのことです。
スペックは以下の通りです。
レンズ:D.ズイコー 40mm F2.8
ISO感度:ISO25~ISO400
絞り:F2.8~F22・A(オート)
シャッタースピード:絞りオート時(1/30秒・1/250秒) / 絞り手動時(1/30秒)シャッタースピードは1/30秒と1/250秒の2段階しかなく、手動時は1/30秒のみとなります。
手動は、フラッシュ撮影用なので、通常はA(オート)での撮影となります。ピント合わせは目測(ゾーンフォーカス)となり、距離環に記されたマーク「クローズアップ(1m)、ポートレート(1.5m)、グループ(3m)、風景遠景(∞)」に合わせて撮影します。
取り扱い説明書には、「写したいものまでの大体の距離を目測し、距離環を回して、適当なゾーンフォーカスマークに赤指標を合わせます。」とあります。
今のデジタルカメラのようなキッチリとしたピント合わせや細かな露出調整ではなく、おおまかな距離感覚で絞りもA(オート)に合わせて気軽に撮影を楽しむカメラです。
修理内容
こちらのTRIP 35の不具合は以下の通りです。
・無限遠が出ておらず、ピントは後ピンになっています。
・中玉レンズに点カビがあります。
・ASA環にガタがあります。
・底蓋を開けると、配線の引き回しが通常と異なっています。このTRIP 35は、おそらく以前修理が行われているようで、所どころ修理に不備がある様子です。
無限遠が出ていない事もそのひとつと思われます。
ピントについては、明らかに後ピンになっており、かなりズレているので、ピントの調整不足と思われます。こちらの修理は、前玉のレンズを外し、ヘリコイドの清掃を行ってから、グリスを塗り、ピント調整を行いました。
調整後は無限遠も出ており、特にレンズやヘリコイド等に問題はありませんでした。次に、中玉を取り出して光にあててレンズを見てみると、レンズに小さな点のようなカビがありました。
中玉レンズ(清掃前)
赤丸部分がカビこちらは、カビ取り清掃を行いましたが、カビがコーティングまで入り込んでいる様子で、何度か清掃を行いましたが、カビ跡が残りました。
カビはレンズ周辺で小さいので、撮影にはほぼ影響は無いと思われます。中玉レンズ(清掃後)
ASA環のガタについてですが、こちらはネジを締め直すことで、対応しました。
最後に配線の引き回しについてですが、通常、下記写真のように三脚穴にリード線を回して配線の引き回しを行いますが、お預かりしたカメラは三脚穴にリード線を回しておらず、リード線にかなり遊びがありました。
三脚穴にリード線を回さなくても、現状は特に不具合は生じていない様子ではありましたが、リード線に遊びが多いと、場合によってはリード線が思わぬところを噛んでしまったり、可動部品に引っ掛かることもあるので、通常通り、三脚穴にリード線を回し、あまりリード線に遊びが生じないように配線をし直しました。
底面(底蓋を開けた状態)
配線し直し後