OLYMPUS G.ZUIKO AUTO-S 55mm F1.2
仕様
マウント オリンパス OMマウント レンズ構成 6群7枚 絞り羽根枚数 8枚 最短撮影距離 0.45m フィルター径 55mm 全長/最大径 47mm/65mm 重量 310g 発売年月 1973年(昭和48年) 修理内容
こちらのG.ZUIKO AUTO-S 55mm F1.2のレンズは、絞り羽根の開閉不良とレンズの黄変があるとのことで、修理依頼がありました。
黄変
G.ZUIKO AUTO-S 55mm F1.2には、前期型と後期型があり、レンズが黄変するのは前期型で、その理由は、一部のレンズ硝材に放射性物質である酸化トリウムが含まれているためです。酸化トリウムが使われているレンズは、アトムレンズとも言われています。
1950年代にライカがレンズ硝材に放射能物質を混ぜることで、屈折率などの光学特性を上げることに成功したことから、各社、1970年代くらいまでレンズ硝材に利用され、製造されて来ましたが、レンズが黄変するため、以降、屈折率を上げるには、アポクロマートといわれているランタン材などが使われるようになりました。
放射線と聞くと、ビックリしますが、レンズに含まれる放射線量は微量で、人体に影響を及ぼさないものと言われています。(そもそも、放射線量が多ければ、フィルム自体が感光してしまうので)
レンズが黄変するのは、酸化トリウムが発するガンマ線(電磁波)により、レンズが黄色く変色してしまうブラウニング現象と言われている経年変化です。また、影響は、隣接する酸化トリウムが含有していない通常のレンズも黄変させてしまうようですが、今回のレンズについては、酸化トリウムが含まれたレンズのみが黄変しており、通常のレンズには、その兆候は見られませんでした。
黄変の修理は、紫外線の照射処理です。
紫外線を長時間照射することにより、黄変が薄らいでいきます。
写真は、紫外線の照射前と照射後になります。
こちらのレンズは、元々のレンズコーティング色が茶色なので、黄変なのかどうか、外観だけでは、見分けが少し付きにくい場合があります。
しかし、レンズに光を通して見てみたり、カメラに装着してファインダーを覗けば黄変の有無はハッキリと判り、黄変が酷いと、写真の色にも影響します。
絞り羽根開閉不良
絞り羽根は、油の付着が見られ、その影響で絞り羽根が正常に開閉していませんでした。
修理は、レンズを分解して、絞り羽根のユニットを取り出し、羽根の脱脂のためベンジンを使って洗浄を行っています。
洗浄後は、絞り羽根は正常に開閉するようになりました。
主な修理内容は下記の通りです。
・レンズ黄変修理
・絞り羽根開閉不良修理
こちらの記事を見て、お問い合わせいただいたお客様の同一機種のカメラ修理をお約束するものではありませんので、あらかじめご了承ください。