Canon AE-1 PROGRAM
今日は、キヤノンAE-1プログラムのフィルムカメラ修理をご紹介します。
お預かりしたAE-1 PROGRAMは、モータードライブMAセットが装着されたものです。
キヤノンAE-1 PROGRAM(1981年発売)はそのネーミングからキヤノンAE-1(1976年発売)の後継機にあたりますが、どちらかと言うと、キヤノンA-1(1978年発売)寄りのカメラです。
シャッターダイヤル周りはA-1と異なりますが、電源スイッチ周りのデザインはA-1を踏襲していたり、ファインダ情報がA-1のように赤色LEDで表示されます。
自動露出の機能は、シャッタースピード優先式AEにプログラムAEを搭載したデュアルモードとなっており、A-1で好評だったパームグリップも採用されています。
また、モータードライブMAは、キヤノンA-1専用に開発された製品でしたが、AE-1 PROGRAMでは、共用化が図られ、モータードライブMAが使えるようなっています。
しかし、A-1との差別化は図られており、連写速度は、A-1が秒5コマに対して、AE-1 PROGRAMは秒4コマということになっています。
販売価格はAE-1 PROGRAMがシルバー6万円、ブラック63,000円に対して、A-1は83,000円(ブラックのみ)だったので、連写速度に差別化を図ったのではないかと思われます。
AE-1 PROGRAMはA-1と比べてもいくつか利点がありますが、何といっても、フォーカシングスクリーンがユーザー自身で交換出来るのは、メリットのひとつと思います。
キヤノンAE-1プログラムは、1981年(昭和56年)から昭和の終わり頃である1988年(昭和63年)の約7年間、生産がされた息の長いカメラです。
EOSシリーズが1987年(昭和62年)に登場してもなお、生産がされたFDマウントのカメラで、Aシリーズとしても、一番最後まで販売されることになったカメラです。
修理内容
こちらのAE-1 PROGRAMは、シャッター不良なのですが、カメラを正面を向けた場合と、地面に向けながらシャッターを切った場合で動作が異なるということで、修理依頼がありました。
カメラを拝見すると、カメラを構える位置によって確かにリターンミラーの動作が緩慢になる傾向がありました。
しかし、根本的にどの位置にカメラを構えても、正常にシャッターを切ることは出来ませんでした。
こちらのAE-1 PROGRAMのシャッターの不良は、複合した不具合が原因で動作不良を起こしています。
シャッター不良
キヤノンAE-1PROGRAMでよく見られる不具合として、シャッター鳴きがあります。
シャッター鳴きはリターンミラーを動作させるギアの油切れからギアが鳴いてしまい、初めはシャッターを切った際に異音がするだけですが、症状が進行するとシャッター切った際、異音と同時にゆっくりミラーが動作してシャッターが切れます。さらに症状が悪化すると、ミラーアップしてシャッターが切れなくなります。
しかし、こちらのキヤノンのAE-1 PROGRAMは、シャッター鳴きの症状は見られず、シャッターを切っても、異音はありませんでしたが、ミラー動作がゆっくりで、シャッターの動きもおかしい状態でした。
そこで、ギアにグリスが固着(粘り)してのではないかと考え、ギア部分を清掃したところ、正常にシャッターが切れるようになりました。
しかし、カメラを構える位置によって、やはり、リターンミラーの動作が緩慢になってしまう現象が発生しています。
リターンミラー動作不良
2つ目の原因は、リターンミラーを定位置に戻すためのバネ外れが原因でした。
不具合の原因を探るため、カメラの位置を変えながらシャッターを切っていたところ、リターンミラーの小さいバネが外れていることに気付きました。
この外れているバネには、シャッターを切った後、リターンミラーを定位置に戻す役目がありますが、このバネが本来の位置から外れて、別の箇所にバネが掛かっており、その影響でバネがテンション不足に陥り、リターンミラーを定位置に戻せなくなっていました。
このバネを正しい位置に掛け直すことで、正常なテンションが出せるようになり、リターンミラーは問題なく動作するようになりました。
ソノレイド清掃
シャッター速度を電気的に制御するソノレイドですが、経年劣化でカーボン汚れの付着がありますので、念のため清掃を行っております。
絞り連動不良修理
こちらも、AE-1PROGRAMでは、良く見受けられる不具合のひとつです。
絞り連動不良は、絞り連動レバーに繋がるギアの油切れにより、ギアの動作が悪くなり、設定した絞り値でシャッターが切れなくなる不具合です。
こちらは、該当するギアへ注油を行っております。
シャッター速度確認調整
測定器を使ってシャッター速度を測ると、先幕と後幕のバランスが悪く、また、シャッター速度も全体的に遅い状態でした。
特に1/1000秒は許容範囲を超える遅い速度でした。
シャッター速度は、測定器を使って許容範囲に収まるよう、調整を行いました。
また、シャッター速度の調整については、事前にシャッター幕軸への注油を行い、油が馴染んだ頃合いを見計らって、シャッター速度の調整を行っています。
露出計確認
露出計については、測定器で測ったところ、適正露出を示していました。
主な修理内容
・リターンミラー動作不良修理
・ソノレイド清掃
・絞り連動不良修理
・シャッター速度確認調整
・露出計確認
・ファインダー清掃
・フィルム室清掃
・外観清掃
こちらの修理ブログを見て、お問い合わせいただいたお客様の同一機種のカメラの修理をお約束するものではありませんので、あらかじめご了承ください。
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